ここにしかない饅頭と博物館。カブトガニの町「笠岡」を歩く。
浜辺で産卵するカブトガニを見たことがある。小学生の時、どこの海岸だったか記憶にないが、母親の同僚の通称「カブトガニのお兄ちゃん」に連れて行ってもらったのだ。初めて見るカブトガニは、いかついフォルムの動くフリスビー、にしか思わなかった。
あれから約30年たった今、私の中でカブトガニ熱がヤバい。と言うのも、何かのサイトで見たカブトガニ饅頭に心奪われたからだ。そんなわけで、その饅頭がある岡山県笠岡市に行ってきた。
カブトガニ(♂)の剥製。改めて見ると、派手な武器のようでカッコいい。
笠岡市は、古くからカブトガニの町としての歴史がある。戦前より繁殖地として国の指定を受けたことや、当時、漁の網を切る害獣として駆除(石垣の隙間に押し込んで殺したり)されていたカブトガニの保護に力を尽くした男たちの存在がその背景にある。
笠岡駅から歩いて5分ほど、静かな商店街の中に目的のお店「清月堂」はあった。中に入ると、僕と同じくカブトガニ饅頭狙いの観光客らしきカップルがいた。気さくな女性店員さんからこの町の歴史など伺う。
目的は果たしたが、せっかくの笠岡。世界で唯一と言うカブトガニ専用の博物館にも行ってきた。これが!予想以上に楽しい。1時間あれば見て回れると踏んでいたが、とんでもない。館内にあったカブトガニ関連の書籍も読みつつ、じっくり2時間半見て回った。知らない子供の父親を装って、スタンプラリーにも興じてきた。
カブトガニ博物館外観
昔の人(いつの時代だったかは忘れた)が描いたカブトガニのイラスト。昔は魚と思われていた。
およそ1年に1度脱皮をする。オスは15回、メスは16回の脱皮の末に成体となる。
脱皮する幼生。ピョコッ。
コテン。
甲羅を剥いだカブトガニ写真もあった。(クリックでモザイク無しの画像を表示)
左側が青くなっているのは、生殖巣に青い色素を注入しているため。
カブトガニ以外にも、多くは無いが水生生物が飼われていた。ハゼ超可愛。
カブトガニと言えば、その血液の話題を耳にすることがある。銅が含まれるため青い色の血であることや、毒素に反応するとゲル状に固まる特殊な性質が医療に役立っていること。また、その血液を採取する際の痛々しいシーン(体を折り曲げられた状態で台に固定されたカブトガニに針を刺す)に対する人々の反応もよく聞く。
そんな状況もあってか、血液に関する説明だけが館内の2箇所でされていた。
今上天皇のカブトガニに関する逸話あり、ボタンを押すと足がガタガタ動く「カブトガニのマリオネット」あり、ここでしか味わえない楽しさのある博物館だった。館内の至る所に登場するマスコットキャラクター「カブニ」くんを探すのもまた楽しい。
笠岡や北九州など西日本の一部地域の海岸には、数は激減しているそうだが今も自然の中でカブトガニが生息しているという。小学生の時は何とも思わなかったが、今は自然のカブトガニを見に行ってみたい。