究極のパワースポット、「広島市中央卸売市場」を見学する
「市場」こそ究極のパワースポットだ。特に「日の出」の時間帯ならもう無敵である。最高密度の青い夜空を徐々に照らす一筋の光。そして、市場に響く威勢の良い声、フォークリフトが駆け抜ける音、水揚げされた魚が箱の中を跳ねる躍動感は生気に満ち満ちている。自然界のパワーと人間界のパワーが融合する場所・・・それが市場だ。と言うことで、2020年2月の平日のある日、広島市中央卸売市場に行ってきた。
夜明け前。声が飛び交う広島市中央卸売市場を闊歩するカープ坊や
広島市中央卸売市場は、西区草津港(広島の方は商工センターの所と言う)にある中央市場と食肉市場、安芸区船越南にある東部市場から構成されるらしい。今回見学したのは中央市場で、ここでは青果物、水産物、花卉(かき)を扱かう。見学にあたり、市場のホームページで案内されている通り事前に電話予約をし、見学申込書をメールで送っておいた。
見学当日。水産物の競りが始まる4時より少し前に市場に到着。正門の脇にある守衛さんたちのいる部屋を訪ねると、見学者用のバッジを頂いた(帰宅時に要返却)。個人見学の場合案内係はつかないため(10人以上からはつく)、受付を済ませたら以降は自由行動となった。そして私は、市場と言う荒野に1人立ち尽くしていた。どこに何があるかわからかったからだ。とりあえず、守衛所横にあった市場内マップを確認し、自分の思うままに見学させてもらうことにした。
最初は市場内の建物に入って良いのか戸惑っていたが、じゃあ入らずに帰りますか?と自分を問い詰め足を踏み入れる。まず入った建物は花き棟だった。そもそも「花き」という言葉を知らなかったが、観賞用の草花を指すらしい。勉強になる。花きは競りの時間が市場内で最も遅い8時以降であるためか、この時間はわずかに人がいる程度だった。
4時過ぎ、競りが始まる水産棟に向かう。花き棟と違いこちらは今がまさに盛りで、建物から活気が溢れている。仕入れた魚を台車に載せて運ぶ人、その魚を店で捌く人、それを店先に並べる人、やってきた客と交渉する人。ここには窓際族のような、ただ時間を持て余すような人はおらず、皆がそれぞれの仕事を全うしている。仕事観の格好良さがある。
競りの様子も見ることができた。競り人と魚屋の掛け合いは何を言っているのか微塵もわからないが、これでスムーズに進む業界の凄味がある。何なら、何十年も前からこの競りの方法は全国共通で変わっていないんじゃないだろうか。長年かけて磨かれた様式美すら漂うこの作法は、今後もこのカタチのまま末永く続いていくのかもしれない。
4時半。水産棟内で競りが始まった。
5時。競りで仕入れた魚が続々と店に運ばれる
店を出た魚は、台車に載せられお客さんの元へ旅立つ
処理された魚の骨など
競りに参加するにはこのプレートがいるようだ
市場内には天井から昆布のようなものが吊るされた建物が多く見られる
青果棟も楽しい。りんごだけでもこれだけ届く。ちなみに、この市場で入荷量(重量)が一番多い野菜はキャベツだそう。
7時。水産棟内の多くの店が閉店に向けて片づけ中。
2時間前の熱気は消え、静かに揺らめく波だけが見える競りの場所。
市場内には、飲食店や問屋(小売もする)が集まった関連商品売場棟と呼ばれる場所がある。ここの中にあるお菓子屋「野間商店」に行くのを楽しみにしていた。何故か。楽園だからだ。(棚に並ぶ大量のお菓子に包まれるから)。期待通りに値段も安いので、浮かれて買いまくって、反省した(後悔はしてない)。ちなみに、関連商品売場棟は見学予約など不要で、いつでも行って良いそうです。
結局市場には朝4時から9時まで、途中車内で仮眠しながら5時間のんびり過ごさせてもらった。眠いし寒いし平日しかやってないし(野間商店は土曜もやってる)で気軽には行けない場所だが、その険しい山を越えた先には最高のパワースポットが待っている。今回は広島の市場だったけど、他の市場もその地域で最高のパワースポットだろう。パワースポットは、案外身近なところにあるのだ。