大相撲安芸場所(2018年秋巡業)を見る
「背中に毛が生えている人は優しい」。相撲中継のゲストで来ていた、さいとうたかお先生が高安を見てそう呟いた。その基準は私にはわからないが、優しい目つきの力士と触れ合うならば、本場所でなく地方巡業に行くべきだ。本場所にはない、リラックスムードがある。と言うわけで、2018年10月27日(土)、大相撲安芸場所が開催される広島グリーンアリーナに行ってきた。
取組が終わり引き上げる逸ノ城。
朝8時の開場時間を少し過ぎて到着すると、朝太鼓が鳴り響いていた。呼出の凛とした佇まいに見入り、小気味好い太鼓の音に気分が上がる。
遠くまで透き通るような実際の音の良さは録音できていないが、雰囲気だけでも。
以下はこの音を聞きながらご覧ください。
会場内に入ると、土俵上では幕下の力士たちが稽古に勤しんでいた。そもそも地方巡業は、相撲を楽しんでもらう興業であると同時に、力士にとっては稽古の場だと言う。1年のうち、奇数月は本場所、偶数月は2月と6月を除いて地方巡業に出ることを考えると、確かに巡業中にどれだけ稽古を積めるかが成長のカギになるだろう。
稽古に励む幕下力士。胸を貸すのか逸ノ城の姿も見える。
2018年安芸場所のタイムスケジュールはおよそ下記の通り。相撲協会が公開している情報と時間は少し変われど、流れは同じだった。
- 08:00 開場、幕下以下稽古
- 08:00 握手会(~09:00)
- 09:00 十両・幕内稽古
- 11:30 幕下以下取組
- 12:20 初切
- 12:40 十両土俵入り
- 13:00 十両取組
- 13:30 相撲甚句・櫓太鼓打分
- 14:00 幕内、横綱土俵入り
- 14:20 幕内取組
- 15:30 弓取式~打ち出し(終了)
早い時間だからか、午前中の稽古の時間帯はお客さんもそこまで多くなく、11時頃から増えてきた。逆に相撲ファンは、この朝の時間帯が勝負のようで、稽古を終えてテーピングを巻いたり、他部屋の力士と談笑する力士めがけてコミュニケーションを取られていた。力士と一緒に写真を撮るならこの時間が良いだろう。サインに応じる力士もいた。(物販コーナーにはそのためのサインペンも売られていた)
稽古の時間はお客さんがまだ少ない。壁際で休む力士の元に、ファンが集まっている。
子供を見つめる子供のような表情の阿炎。常にファンが周りを囲む人気っぷりだった。
握手会中の琴奨菊と妙義龍。
会場の隅で遊ぶ力士たち。身体はでかいが心は少年のよう。見ているこっちが楽しくなる。
人が増えてきてからは、自席で取組や初切、相撲甚句を楽しむ。「弁当高過ぎるわよ!ねぇ!」と憤りのあまり声をかけてくる隣席のご婦人に会釈したり、のんびりと大相撲の空気に浸る。そして会場は、幕内力士の土俵入りとともに一層の盛り上がりを見せる。
いよいよ幕内の取組というタイミングで席を立ち、力士が通る通路へ向かう。己に課したミッション― 自分史上最高に好きな力士、逸ノ城を間近で見る ―を果たすためである。相撲ファンに紛れて通路で待機し、仕事中には有り得ない集中力で撮影したのが以下の写真だ。
壁際で、静かに自分の出番を待つ逸ノ城。他の力士のように、ファンサービスをしている姿を見ない。
ファンから声がかからないのか…否、あまりのオーラにファンが声をかけられないのだ。
逸ノ城ファンは、私もそうであるように、ただそっとイチンノロブの様子を見られれば幸せなのだ。
取組が終わり引き上げる逸ノ城をアニメーションで。2階席からの声援に対し手を挙げる垂涎もののファンサービス。
逸ノ城超かわいい。こう言うとに本人に対して失礼になるが、正直まだ、実力の5割も出せていないと思っている。それくらい、逸ノ城には力があると思っている。2019年こそは、圧倒的な力を見せつけて、世間を驚かせてくれ、応援してるぞ逸ノ城!
開場から打ち出し(終了)まで約7時間。本場所とは一味違う取組を楽しむも良し、初切や相撲甚句などの見世物を楽しむも良し、力士とのコミュニケーションを楽しむも良し。地方巡業は大相撲を堪能できるフルコースだ(しかも安い席なら3,000円ほどで買える)。また来年も楽しみにしている。